アイビーシー(株) ビジネスソリューション事業本部 副本部長
兼 プロダクト事業部 事業部長
橋本和也
企業の IT 環境がクラウドシフトやハイブリッド化によって複雑さを増す中、「運用管理の DX 」は多くの情報システム部門にとって喫緊の課題となっています。複数のクラウドコンソールを渡り歩き、オンプレミス環境との連携に頭を悩ませ、アラートの洪水に溺れていませんか? 監視のサイロ化、トラブルシューティングの長期化は、ビジネスの継続性を脅かすリスクです。
長年オンプレミスネットワークの監視に強みを持つ「System Answer G3(以下 SAG3 )」を中心にソリューションを展開してきた弊社アイビーシーですが、この度、このようなリスクに対応するため、複雑化する IT 運用管理の課題解決に特化した SaaS サービス「ITOGUCHI」を今秋リリースいたします。
このコラムでは、ITOGUCHI に込めた私たちの思い、開発の背景、そしてどのように貴社の IT 運用を革新するかについてお話しさせていただきます。
■ITOGUCHIプロジェクトの始まり ~情報システム部門の「困った」を解消する UI とは~
ITOGUCHI のコンセプトは、2021 年春に「情報システム部門に DX を」という抽象的なミッションから生まれました。私たちは、長年お客様の情報システム部門の課題と向き合ってきた経験をもとに、お客様が潜在的に抱える「困った」を深く掘り下げていきました。
私自身も複数の部門を兼務する中で、パブリッククラウドの複数のコンソールを常時開き、必要な情報を探し回る非効率さに直面していました。Microsoft Office 製品で作成したシステム構成図と実際のコンソールを行き来し、障害時にはアラート情報と構成図をにらめっこする毎日。「このコンソールを統合したい」という切実な思いが、ITOGUCHI 開発の原動力となったのです。
そこで、ユーザーインターフェイスとして着想を得たのが、システム構成図(ITOGUCHI の MAP 機能)をベースとした UI でした。これにより、システムの全体像を視覚的に把握し、必要な情報にすぐにアクセスできる環境を目指しました。
さらに、SAG3 や他社製品・サービスからのデータも統合できるアーキテクチャを採用し、誰もがアクセスしやすいプラットフォームとして、ITOGUCHI を SaaS での提供をベースに企画しました。これにより、初期コストや運用コストを抑え、すぐに利用開始できる環境を実現しています。
■マルチクラウド・ハイブリッド環境の課題を SaaS で解決
現在の IT インフラは、ビジネスの俊敏性とコスト効率の両立が求められる中で、ますます複雑化しています。多くの企業がスピードと柔軟性を求めてクラウドに移行しつつも、セキュリティや既存投資の観点からオンプレミス環境も引き続き活用する、いわゆるハイブリッドクラウドやマルチクラウドという複雑な IT 環境を構築しています。
しかし、この複雑さが新たな課題を生み出しています。それぞれの環境で異なるツールやプロセス、さらにはチームを分けて管理せざるを得ない状況が、運用管理の負荷を増大させ、リソースの最適化を困難にしています。
監視のサイロ化: 各環境で独立した監視が行われ、全体像が見えにくい。
アラートの氾濫:多数のツールから大量のアラートが飛び交い、重要な情報を見落とすリスク。
トラブルシューティングの長期化:状況把握に時間がかかり、問題解決が遅延する。
これらの課題は、慢性的な人手不足と相まって、ビジネスの継続性を脅かす深刻なリスクとなりかねません。情報システム部門だけでなく、パブリッククラウドでサービスを提供する事業者の方々も同様の課題に直面し、ビジネス拡大の足かせになっていることでしょう。
これらの課題を解決するには、ツールの初期コストや運用コストを抑え、すぐに誰でも使える SaaS 型での提供が最適であると、私たちは考えています。
■ITOGUCHI に込めた思い ~問題解決の「糸口」を見つけるプラットフォーム~
「ITOGUCHI」という名前には、システムのトラブル解決、さらには IT 障害ゼロに向けた問題解決の「糸口」になれば、という私たちの強い思いが込められています。「糸口」とは、問題解決の「きっかけ」や「手がかり」。私たちは、現在の複雑なシステム運用に対する課題解決の「糸口」を、このサービスで提供したいと考えています。
「糸口だけでなく答えがほしい」という声も聞こえてきそうですが、運用管理ツール一つで全ての答えを導き出すことは困難です。弊社は長年、マルチベンダー環境を前提としたシステムや運用管理があるべき姿であり、都度最適な構成にできるオプションを各企業が持つことが、システムの健全性や最適なインフラ維持に繋がるという思想でソリューションを展開してきました。ITOGUCHI の設計もこの考え方を踏襲しています。
「今必要な情報」は常に変化し、将来的に陳腐化したり不要になったりする可能性もあります。そのような前提の中で、ITOGUCHI は情報ソースもマルチベンダー / マルチプロバイダーを前提として運用管理ができるプラットフォームを目指しています。そして、これらの情報を集約し、必要な情報を直感的に表示させる「入口」となるのが、ITOGUCHI の MAP 機能です。(「じゃあ IRIGUCHI じゃないか!?」という声もありそうですが、そこはご容赦ください。)
■ITOGUCHI の 3 つの主要機能 ~IT 運用 DX を加速させる~
ITOGUCHI は、前述の運用管理プラットフォームとして、以下の 3 つの基本機能で構成されています。これらは、貴社の IT 運用 DX を加速させるための、強力な基盤となります。
1. MAP:システム構成図の自動描画と履歴管理
手作業での構成図作成・更新の手間をなくし、常に最新のシステム全体像を可視化します。
履歴管理機能により、変更点も容易に追跡可能です。
2. 構成管理:マルチクラウド・オンプレミス横断でのデータ一元管理
パブリッククラウドとオンプレミスの両方から取得したデータを一元的に管理し、必要な情報を迅速に検索・閲覧できます。
3. インシデント管理:アラートからタスクまでを一元管理
発生したアラートをインシデントチケットとして管理し、対応状況を可視化します。
スケジュール管理機能により、タスク管理にも活用でき、チームの連携を強化します。
これらの機能に加え、脆弱性管理、トラフィック分析、自動化といった様々なデータを取り込めるオプションを順次リリースしていく予定です。皆様のご要望もお聞きしながら実装を進め、AIOps についても、標準機能とオプション機能を使い分ける形で、お客様が最適な形で導入できるよう選択肢を提供していきます。
機能詳細やユースケースについては、今後のコラムやホームページ等でご紹介してまいりますが、「すぐにでも情報が欲しい」、「自社の課題にどう活用できるか知りたい」という方は、ぜひ弊社営業までお気軽にお問い合わせください。
基本機能をこの 3 つにしたのは、ITOGUCHI の製品コンセプトに不可欠であることはもちろん、弊社の MSP サービス「SAMS(Speedy Action Management Service)」の運用で培った豊富な知見が大きく影響しています。SAMS の運用において、システムの全体像の把握や構成要素の理解に多くの時間を要することが、業務範囲を限定する要因となっていました。特に、他者が構築した「ブラックボックス化」したシステムを運用する際、トラブル発生時までその詳細が分からないという課題は、多くの現場で共通しています。
この「ブラックボックス化」を解決するために、MAP 機能と構成管理機能を ITOGUCHI の基本機能として実装しました。SAMS の「Management」機能を再定義し、「Action」を促すプラットフォームとして提供する、という発想からこれらの機能は検討されています。また、MSP としてインフラ運用の中でチケット管理システム(ITOGUCHI のインシデント管理機能)が不可欠であるという経験から、お客様の運用ナレッジ蓄積の助けになればと考え実装に至りました。
■運用管理 DX からビジネスの成長を支援する ITOGUCHI
ITOGUCHI は単なる監視ツールではありません。そもそも基本機能に「監視機能」は含んでおりません。
ITOGUCHI は、皆様の IT 運用を、データに基づいた意思決定へと進化させ、ひいてはビジネスの成長を加速させるためのプラットフォームです。
システム構成、状態、インシデント情報に関わる全ての関係者が共通認識を持ち、情報共有、状況把握、課題解決のための議論を円滑に進めるための共有ワークスペースです。コミュニケーションとコラボレーションを促進することで、運用管理の真の DX を実現します。
私たちアイビーシーは、このITOGUCHI が、お客様のマルチクラウドおよびオンプレミス環境の運用管理における新たな標準となり、皆様のビジネスの成功に不可欠な存在となってほしいと願い、現在も開発を続けております。
ITOGUCHI が貴社の IT 運用にどのような変革をもたらすか、ぜひご期待ください。そして、新たな運用管理の「糸口」を、ITOGUCHI で見つけてみませんか?